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Nyquistの安定判別法

一巡伝達関数の周波数特性から、閉回路の安定を判別する方法である。すなわち 一巡伝達関数のベクトル軌跡を描いたとき、

図 1.33: Nyquistの安定判別法
\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.50]{eps/1-6-1.eps} \end{center} \end{figure}

「一巡伝達関数のベクトル軌跡を$\omega $が0から$+\infty $まで増加する 向きにたどるとき、点$(-1,j0)$をその左側に見れば安定、右側に見れば 不安定である。」

1.33において、(a)の場合は安定であり、(b)の場合は 不安定である。

$\omega $$-\infty$から0までのベクトル軌跡は同図破線のごとく鏡像となり、 $\omega $$-\infty$から$+\infty $までのベクトル軌跡は同図のごとく 原点から出発し、破線を通り、$\omega =0$のところで半径が無限大の右側の 半円を描き、実線につながって原点に戻る。このような閉曲線の 進行方向右側に囲まれた部分が不安定領域であり、この中に$-1+j0$の点が あると不安定となる。

Nyquistの安定判別法を厳密に定義すると次のとおりである。 「$\omega $$-\infty$から$+\infty $まで変化して一巡伝達関数の ベクトル軌跡を描いたとき、これが点$(-1,j0)$のまわりを反時計方向に $N$回回転した場合、

この制御系が安定なためには、

\begin{displaymath}N=P\end{displaymath}

でなければならない。ただし、$P$$s$平面の右半面に存在する一巡伝達関数の 極の数である。」
[例] $G_0(s)=\frac{\displaystyle K}{\displaystyle s-a},a>0,K>0$の場合

図 1.34: ベクトル軌跡の例
\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.50]{eps/1-6-2.eps} \end{center} \end{figure}

$\frac{K}{a}>1$のとき1−35図(a)のごときベクトル軌跡を描き、  $N=1,P=1$ ゆえ安定である。

$\frac{K}{a}<1$のとき同図(b)のごときベクトル軌跡を描き、  $N=0,P=1$ ゆえ不安定である。 この図の場合、進行方向の左側が閉曲線になっているゆえ、この中が 安定領域であり、この中に$-1+j0$の点があれば安定である。



Yasunari SHIDAMA
平成15年4月9日