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システムが
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(2.118) |
で表示されたとき、ブロック線図は 図2.7 のように描かれる。
図 2.7:
システムのブロック線図
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はベクトルであるから、それぞれは各変数を含んでいる。
従ってその中には実際に制御できるもの、あるいは観測できるものとできないもの
がある。ここに可制御性、可観測性の概念が生じる。
可制御性、可観測性の定義は次の如くである。
- 可制御性:
- ある制御入力
によって有限時間に
システムの初期状態
から、任意の最終状態
に到達できる
システムを可制御という。
- 可観測性:
- 出力
を有限時間の間、観測することにより、
時刻におけるすべての状態
を求めることができるならば
可観測という。
図 2.8:
システムの可制御、可観測の部分
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図2.8 の場合、の部分は可制御、可観測であり、の部分は可制御、
不可観測、の部分は不可制御、可観測の部分は不可制御、
不可観測である。システム全体としては不可制御、不可観測となる。
(2.118)式のシステムにおいて
- 次のの複合マトリックスがの階数(rank)であるときは
可制御である。
- 次のの複合マトリックスがの階数(rank)であるときは
可観測である。
またシステムが次の単入力、単出力の場合は
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(2.119) |
- 次のの複合マトリックスが正則であれば可制御、可観測
である。
なおマトリックス
の階数とは、
の中の行と列をいくつか
取り除いて作られる行列の行列式を次の小行列式といい、
次の小行列式はすべてであるが、次の小行列式の中にでないものがあるとき、
このを指し
と書く。例えば
のとき
である。
- 列の置換、および行の置換を行っても階数は変わらない。
- 1行または1列の全要素に同じ数を乗じても階数は変わらない。
- 1つの行(または列)にツ他の行(または列)の任意倍を加えても
階数は変わらない。
- 全部の要素がである行または列は除去しても階数は変わらない。
- 他の行(または列)の線形結合である行(または列)は除去しても
階数は変わらない。
例
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(2.120) |
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の系の場合の可制御性、可観測性を判別する。
であるから
ゆえに
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(2.121) |
この行列式はとなり、特異行列であるから不可制御である。
ゆえに
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(2.122) |
これも特異行列ゆえ不可観測である。
図 2.9:
システムのブロック線図
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この例はブロック線図に描くと 図2.9 の如くなり、#1ブロックは可制御
、可観測であるが、#2ブロックが可制御、不可観測であり#3不可制御、
可観測であるため全体として不可制御、不可観測となる。
もしが#3の入力と接続されている場合は、全体として可制御、可観測
となる。
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Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日