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状態空間の概念

前章までに述べた従来の制御理論においては、もっぱら単一の入力に対する単 一の出力の応答を取り扱ってきた。したがって、その主役を演ずるものは一つ のまとまった形の伝達関数であった。

しかしながら、入力から出力に達するまでの間には多くの要素があり、これら 各要素間の信号(諸変数)にも着目して、系の内部構成が応答にどのように影 響するかをも考慮しようということが考えられてきた。また入力についても多 くの入力を同時に考えようという、いわゆる多変数(多入力、多出力)系とし て扱うように考えられたのが現代制御理論である。

たとえば、図2.1$(a)$に示すような制御系に対し、従来は入力に 対する出力$x$の応答のみを考えてきた。これを同図$(b)$のごとく分けて、新 しい中間変数を考えることにする。出力$x_1$も中間変数$x_2,x_3$も共にこの 系の状態を表しているので、これらを状態変数(State Variables)という。

図 2.1: 状態変数(State Variables)
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\psbox[scale=0.40]{eps/2-1-1.eps} \end{center} \end{figure}

いま、これらの状態変数を、それぞれ各座標軸にとることによって空間を構成 した場合、これを状態空間(State Space)という。例えば3次系の場合は 図 2.2 に示すような3次元空間で表現される。この時、ある時刻に おけるこの系の状態は、その空間内の一点で示される。これを状態点という。 時と共に状態点は空間内に線を描きながら移動する。この線を軌道 (Trajectry)といい、この系の動的な挙動を示している。

図 2.2: 状態空間(State Space)
\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.40]{eps/2-1-2.eps} \end{center} \end{figure}



Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日