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(2.298)式の代わりにシステム方程式を
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(2.326) |
とし、(2.299)式の代わりに評価関数を次の2次形式
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(2.327) |
とする。ここで
は重み係数といい対称マトリックスで
は準正定、
は正定、
は拘束がないものとする。(2.316)式より
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(2.328) |
になり、(2.321)式に適用して
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(2.329) |
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(2.330) |
を得る。(2.335)式を(2.333)式に代入すると
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(2.331) |
になる。したがってハミルトンヤコビの式は
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(2.332) |
となる。この偏微分方程式を解くのに、次のようにおく。
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(2.333) |
ここに
は正定対称行列で の時、
。
上式より
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(2.334) |
また
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(2.335) |
(2.339)式(2.340)式を(2.337)式に代入すると
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(2.336) |
になる。また
ゆえ(2.341)式は
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(2.338) |
となる。任意の
に対し上式が成立するには
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(2.339) |
でなければならない。これはリカッチ形の微分方程式である。これを
の条件のもとで得られた解
と
(2.339)式を(2.335)式に適用すると
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(2.340) |
になり
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(2.341) |
とおくと
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(2.342) |
となる。これをブロック図に書くと 図2.19 のごとくなる。
すなわち
が最適フィードバックゲインを与えることになる。
図 2.19:
ブロック図
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図 2.20:
変化特性
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は通常 図2.20 のごとく、初期時刻の間は大体一定値を保ち、
最終時刻に近づいてから変化するという特性を持っている。したがって制御時間が
充分長いときは、
が一定値を保っている間に制御が完了する。したがって
のときは
として扱うことができる。
すなわち評価関数が
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(2.343) |
のときは(2.344)式は
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(2.344) |
となり、これをリカッチ形代数方程式という。この場合
を正定の定数として求め
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(2.345) |
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(2.346) |
となって、最適フィードバックゲインは定数となる。
いま最適制御法則が得られたとして
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(2.347) |
とする。これを評価関数に代入すると
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(2.348) |
となり、時間で微分すると
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(2.349) |
となる。系が安定であるためには、をリアプノフ関数として考えるとき、
が正定であり、であればよい。そこで
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(2.350) |
とおく。そのとき
となる。(2.354)式と(2.356)式を等値とすると
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(2.352) |
となる。ここで
の変化に対して
を最小にする。そのため上式を
で偏微分して
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(2.353) |
とおくと
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(2.354) |
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(2.355) |
が得られる。これを(2.357)式に代入すると
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(2.356) |
となり、(2.349)式で得られたリカッチ形代数方程式と同じ結果が得られる。
したがって最適フィードバックゲインは(2.351)式より求められる。
例
システム方程式
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(2.357) |
評価関数
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(2.358) |
の場合の最適制御方則を求める。
であるから
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(2.359) |
とし、(2.362),(2.363),(2.364)式を(2.349)式に代入すると
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(2.361) |
となり、これより
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(2.362) |
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(2.363) |
が得られる。したがって
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(2.364) |
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(2.365) |
になる。これをブロック線図にすると 図2.21 となる。
図 2.21:
ブロック線図
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(2.344)式よりベクトル・リカッチ形微分方程式は
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(2.366) |
である。
いま
なる正方行列を次のようにおく。
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(2.367) |
ただし境界条件
とする。
もし
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(2.368) |
なら、これを偏微分すると
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(2.369) |
となり、これに(2.372)式の関係を代入すると
となり、元のリカッチ方程式となる。
したがって(2.373)式より
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(2.370) |
がリカッチ方程式の解である。
そこで(2.372)式の同次方程式の遷移マトリックスを
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(2.371) |
とすれば、解は境界条件を考慮して
になる。この時、をに置き換える。したがって(2.376)式より
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(2.373) |
となる。もし
のときは
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(2.374) |
になる。(2.379)又は(2.380)式より解が求められる。
例
システム方程式
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(2.375) |
評価関数
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(2.376) |
とした場合の最適制御法則を求める。
上式より
となるので、リカッチ微分方程式は
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(2.377) |
になる。(2.372)式より
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(2.378) |
となるので、この式の遷移マトリックスは
になる。
境界条件で
とした場合上式のを
に置き換えて、(2.380)式より
となる。
ゆえに(2.345)式より
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(2.381) |
となる。 とした場合
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(2.382) |
という定数になる。したがって
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(2.383) |
となる。これをブロック線図にしたのが 図2.22 である。
図 2.22:
ブロック線図
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システム方程式が次のようにプロパー(厳密プロパーでなく)な場合を考える。
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(2.384) |
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(2.385) |
評価関数を
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(2.386) |
とする。
は準正定対称、
は正定対称行列とする。上式に(2.391)
式を適用すると
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(2.387) |
となる。ここで
とおくと、(2.393)式は
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(2.391) |
になる。(2.326)式より
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(2.392) |
となり、(2.311)式に適用して、
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(2.393) |
より
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(2.394) |
を得る。(2.400)式を(2.398)式に代入すると、
となる。の場合ハミルトン・ヤコビの式は
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(2.396) |
になる。ここで(2.389)式と同様
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(2.397) |
とおくと、
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(2.398) |
となり、左辺の第1項を(2.342)式と同様の方法で分けると
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(2.399) |
になり、任意の
に対し上式が成立するには
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(2.400) |
が満たされればよい。これがリッカチ型の代数方程式である。
この式の解
を用い、(2.400)式より
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(2.401) |
が得られ最適フィード・バックゲインは
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(2.402) |
となる。
このことは
とし、評価関数を
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(2.403) |
とした場合のレギュレータ問題と等しい。ただし
である。なお(2.409)式は次のように表示することもできる。
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(2.404) |
例
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(2.405) |
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(2.406) |
かつ
の場合、(2.394)(2.396)式より
を得る。したがって
となり、これらを(2.406)式に代入すると
になる。ゆえに
の関係を得る。
(2.416)式より
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(2.410) |
これを(2.415)式に代入すると
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(2.411) |
(2.417),(2.418)式を用いて、及びを
で表し、これを(2.414)式に代入し、整理すると
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(2.412) |
になり、これを解いてを求め、(2.417),(2.418)式より
を求め、
が正定であるようにすると
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(2.413) |
を得る。したがって(2.408)式より
がフィードバックゲインとなる。
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Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日