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図 2.43:
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プラントの状態方程式を
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(2.758) |
(ただし
)とし、伝達関数を
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(2.759) |
とした場合、図2.43の還送差行列は入力端(図中の点)で見た場合
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(2.760) |
出力端(図中の点)で見た場合
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(2.761) |
である。もし
が最適フィードバック・ゲインであれば
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(2.762) |
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(2.763) |
であるから、(2.780)式を変形して
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(2.764) |
とし、これに(2.781)、(2.777)、(2.778)式
を適用すると
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(2.765) |
になる。担し*印は共役転置を意味する。上式の左辺は正定であるから、
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(2.766) |
が成立し、
なら
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(2.767) |
になって、(2.642)シ式と同様低感度特性を示す。
(出力端に関しては(2.652)式で低感度性を示した)
以上
の時は、入力端、出力端とも最適制御系は低感度特性を持つ。
図 2.44:
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もし
で、全状態変数が検出できないときは、カルマン・フィルタ型
またはルーエンバーガー型オブザーバが用いられる。図2.44は前者を用いた
場合である。図より
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(2.768) |
であり、この
をオブザーバ・ゲインと称し、最適レギュレータの双対性から
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(2.769) |
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(2.770) |
より決定する。
この系で、点の入力端、点の出力端で還送差行列を求めると(2.785)式と同様の結果が得られ低感度特性を示すが、これらは制御器内部の点であり
余り意味がない。点、点の方が重要であるが、それらの点での還送差行列は
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(2.771) |
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(2.772) |
のようになり、それぞれ
に対し付加された部分があるため、
その作用で低感度特性が保証されない。その場合の低感度特性を回復させる手法が
LTRである。
この方法は、(2.787)式の代わりに
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(2.773) |
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(2.774) |
を用い、にすると最適制御の場合と等しく成り低感度特性
が回復されるという手法である。
しかしにすると
のゲインも非常に大きくなり実際的でな
くなる。そのためを適当な大きさに取り、有効な周波数範囲で低感度となるよ
うにする。結果的には
の系統のゲインを、
の系統のゲインより相対的に大きく
して、後者の影響を小さくする狙いであり、そのため
の値が大きくなるのである。
図 2.45:
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図2.45のように出力フィードバックの系統を付加する方法である。このとき出力端の
還送差行列は
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(2.775) |
になる。
いま右辺第2項がロバスト性をもつ
と
等しくなるように
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(2.776) |
とする。もし入出力数が等しいなら
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(2.777) |
と置くと(2.754)式は
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(2.778) |
となるので
なら上式はで
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(2.779) |
になり、
が計算できる。出力数が入力数より大きいときは類似の方法で
を定めることができる。
この
を用いるとロバスト性は得られるが、閉ループ特性が変わってくるので、
モデル追随系を用いて望ましい特性を維持させる必要がある。
()モデルマッチングの方法
前項の方法ではモデル追随系を必要とするため次数が大きくなる。これを避けるのが
この方法である。
図 2.46:
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図2.46に示すようにQというループが付加されている。
このときプラントの状態方程式は
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(2.780) |
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(2.781) |
オブザーバの状態方程式は
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(2.782) |
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(2.783) |
両者をまとめて
ここで
とおき
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(2.786) |
とすると
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(2.787) |
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(2.788) |
になり、
から
までの伝達関数は
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(2.789) |
となって、
の影響はない。
しかし還送差行列に関しては
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(2.790) |
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(2.791) |
になり、もし
または
となるような
が見出せれば、
入力端または出力端でのロバスト性が得られる。
このような
を定数で求めることは一般には困難であり(
)または
(
)が最小となるように選ぶ。もし
を
のようにの関数とし
、入力と出力が同次数のとき
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(2.792) |
とすると、(2.818)式で
になるから
となる。
出力端の場合は
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(2.794) |
にとれば
となる。
入力数出力数のときはこの関係は求められる。ただし最小位相系でないと不安定極を
持つことになる。またこの方法は次数が増大する欠点がある。
()
(または
)制御
通常のユークリッド・ノルムは
を安定で、真に(厳密)プロパな有理関数とした
とき
で定義される。行列の場合には
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(2.796) |
で表示される。ここに*印は共役転置を意味する。
(2.813)式を一般的に表示すると
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(2.797) |
になるが、にすると
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(2.798) |
になる。これはあるで
が最大になり、その所が強調される形になるからで、
ワースト・ケースを意味する。
の場合は、
は安定でプロパな
有理関数である。
行列の場合には次式となる。
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(2.799) |
と
との間には
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(2.800) |
の関係がある。
は
の列の数と一致する
のベクトルである。
制御では制御系を次のように表示する。
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(2.801) |
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(2.802) |
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(2.803) |
ここで
は外部入力、
は操作入力、
は制御量(または誤差量)、
は観測出力である。
これを伝達関数で表現すると
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(2.804) |
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(2.805) |
これを一般的に書くと
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(2.806) |
ここで
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(2.807) |
である。制御器は
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(2.808) |
で表され、ブロック図は図2.47の形となる。
図 2.47:
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から
までの伝達関数は
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(2.809) |
である。なぜなら(2.824)式より
であるから。
制御は閉ループ系が内部安定で、かつ
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(2.810) |
となるような
を見出すことである。
いま図2.46の場合を
を使ってブロック図にすると図2.48
のようになる
図 2.48:
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図より
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(2.811) |
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(2.812) |
いま
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(2.813) |
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(2.814) |
とおき、それぞれ安定であるとする。また
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(2.815) |
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(2.816) |
とおく。(2.819)、(2.830)、(2.831)、
(2.834)式より
また(2.819)、(2.830)、(2.832)、(2.834)
式より
すなわち
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(2.819) |
になり、また(2.820)式は(2.830)、(2.834)
式より
また(2.833)式は(2.821)式を用い
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(2.821) |
から
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(2.822) |
(2.838)式から
に対する
の伝達関数を求め、それを(2.841)式に代入すると
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(2.823) |
のような伝達関数行列となる。図2.49の左側のようなブロック図を考えた場合、
図 2.49:
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(2.824) |
であるから、これを(2.842)式に適用すると
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(2.825) |
となり同図右側の図と等価になる。
ゆえに
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(2.826) |
(すなわち
)
となるような
を求めるのが
によるLTRである。
(2.812)式の前半部分
が
安定であるために
は{ }内の零点が最小位相系である必要がある。もし非最小位相系である場合は
非最小位相部分と最小位相部分とに分けて
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(2.827) |
のようにする。例えば
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(2.828) |
のとき
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(2.829) |
のようにする。
この
を(または、全域通過)関数と呼び
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(2.830) |
のような性質を持つ。一方
を関数と呼ぶ。
を掛けても
ノルムは変わらないという性質がある。
(2.812)式の
をこの関数に関しての逆行列を取るよう
にすれば、不安定極は生じないことになるが、LTRは部分的になる。
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Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日