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高周波に対する安定の確認

前記のごとく$Z$変換によって安定判別を行った場合、それは各サンプリング時 点において安定であることを意味しているのであって、サンプリング時点間に不 安定現象が発生していることもありえる。
図 3.22:
\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.60]{eps/3-6-5.eps} \end{center} \end{figure}

たとえば、図3.22に示すごとく、実際は振動しながら発散しているの に、サンプル値としては一定値として検出される場合がある。

このような場合には拡張$Z$変換を用いてサンプリング時点間の現象を確認する 必要がある。

[例] $\displaystyle G(s)=\frac{1}{s+\gamma}+
\frac{\pi /T}{s^{2}+2\alpha s+\alpha^{2}+\pi^{2}/T^{2}}$ の場合、通常の$Z$変換を行うと

\begin{eqnarray*}
G(Z)
& = & \frac{\displaystyle Z}{\displaystyle Z-d_{1}}
+\f...
...\
& & \mbox{ ただし }d_{1}=e^{-\gamma T}, d_{2}=e^{-\alpha T}
\end{eqnarray*}

となり、 $\vert\alpha_{1}\vert<1$なら安定と考えられる。

ここで拡張$Z$変換を用いてサンプリング時点間について 確かめてみる。そこで $\displaystyle \Delta=\frac{1}{2}$とすると

\begin{eqnarray*}
G(Z,\Delta)
& = & \frac{\displaystyle d_{1}^{\Delta}}
{\disp...
...1}}+
\frac{\displaystyle \sqrt{d_{2}}}
{\displaystyle Z+d_{2}}
\end{eqnarray*}

となるので、$\vert d_{1}\vert<1$および$\vert d_{2}\vert<1$でなければ 安定ではない。

このように、高周波に対する安定を確認するために 拡張$Z$変換を用いることが必要な場合がある。


Yasunari SHIDAMA
平成15年6月9日