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図5.17で示すような非線形要素を含む閉ループ系の状態方程式は
次式で表される。
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(5.48) |
いまここでは
を非線形奇関数で、
であるとする。入力
が0のときは
となる。
この系に振動が発生している場合を考える。前述のように、
が
近似的に正弦波状と見なされると、非線形要素への入力
も正弦波状と
考えられるから、その各成分は次式で表される。
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(5.49) |
この式はを位相の基準にとってあることを意味している。このような個
の正弦波が非線形要素に加わった場合、非線形要素の各出力の波形は一般に歪ん
だ形をしており次式の左辺で表されるが、高調波成分を省略し、基本波成分のみ
で近似すると次式の右辺で表すことができる。
ただし、
であり、
である。このはフーリエ級数の公式から
によって決定される。これは前述した記述関数の((5.20)
式)に相当する。
非線形要素の出力が(5.50)式で表されると、右辺の第1項は、
すな、わち
と同位相であり、第2項はすなわち
と同位相であることがわかる。
ゆえ、第1項は
と、第2項は
と同位相であるともいえ、これを
(5.50)式に適用すると
は
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(5.51) |
と書くことができる。したがってこれを(5.48)式に適用すると
となる。いま
なる二つの行列を導入し、
その第1列の要素をそれぞれ
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(5.53) |
その他の列の要素を
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(5.54) |
(ただしは
の各要素)とすると(5.53)式は
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(5.55) |
で表される。この式は近似線形化された式であるので、この式をラプラス変換し
特性方程式を求めると
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(5.56) |
となる。この式より安定判別を行うのであるが、
の値が振幅に依
存するので、上式にを代入し、実数成分と虚数成分の各々に対して
成立する二式を連立させ、それより安定性あるいはリミットサイクルの判定を行
う。
[例1]バックラッシュのあるサーボ系
(5.33)図に示すようなバックラッシュのあるサーボ系の
状態方程式は次式で表される。
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(5.57) |
この非線形部分に(5.54)式を適用し、(5.56)式の形にすると
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(5.58) |
となる。このは(5.34)式、(5.35)式より
となる。
一方(5.59)式より、
はそれぞれ
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(5.59) |
となるので(5.57)式の特性方程式は
となる。これにを代入し、実数部と虚数部に分けて書くと次式になる。
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(5.61) |
これに(5.60)式を代入すると
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(5.62) |
となる。
のときの両式を満足するのは
のときであり、この周波数と振幅のリミットサイクルが発生することになる。
[例2]Van Der Polの方程式
この方程式は次式で表される
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(5.63) |
これは非線形の微分方程式である。いまとして相変数の状態方程式で
表すと次式となる。
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(5.64) |
上式より
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(5.65) |
と書ける。いま
とした場合、(5.55)式と(5.67)式より
となり、(5.51)、(5.54)、(5.67)式より
が得られる。また(5.55)式より
であり、(5.51)、(5.54)式より
となる。したがって(5.56)式の形式にすると
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(5.70) |
となる。であるから、
となるので
の関係が成立する。
これを(5.72)式に代入すると、
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(5.71) |
となる。これより特性方程式は
となり、を代入すると
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(5.73) |
となって、
がリミットサイクルの条件となる。
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Yasunari SHIDAMA
平成15年7月28日