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概念

状態変数を各座標軸にとった$n$次元空間を状態空間という。システムのある時 点における状態は状態空間の一つの点として表され、これを状態点という。状態 が変化るすにともなって状態点は移動し軌跡を描く。これを軌道という。軌道は 初期条件を与えることによって描くことができる。

状態空間のうち特殊な場合、すなわち状態変数を相変数にとった場合、これを位 相空間という。また2次のシステムの場合は状態面(位相面)となる。多次元の 空間を考えることは容易ではないので、通常は2次のシステムを状態面(位相面) として取り扱うことが多い。

状態面(位相面)解析はこの軌道を描き、その形を調べることによって系の動的 な性質を解析する方法で、線形系のみならず、微分方程式の係数が状態変数の関 数となるような非線形空間にも適用される。(ただし時変系には適用されない)

すなわち

\begin{displaymath}
\ddot{x} + f(x,\dot{x})=0
\end{displaymath} (5.148)

または
\begin{displaymath}
\ddot{x}+a_1(x,\dot{x}) \dot{x}+a_0(x,\dot{x} )x=0
\end{displaymath} (5.149)

のような形のものに適用される。

位相面解析の場合は(5.150)式を

\begin{displaymath}
\left \{
\begin{array}{l}
\dot{x} = f_1(x,v) \\
\dot{v} = f_2(x,v)
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.150)


\begin{displaymath}
ただし v=\dot{x}
\end{displaymath}

のような形で取り扱う。また状態面解析の場合は
\begin{displaymath}
\left \{
\begin{array}{l}
\dot{x} _1 = f_1(x_1,x_2) \\
\dot{x} _2 = f_2(x_1,x_2)
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.151)


\begin{displaymath}
ただし
\begin{array}{ll}
x_1 & =x_1(x,\dot{x}) \\
x_2 & =x_2(x,\dot{x})
\end{array}\end{displaymath}

のような形で取り扱う。一般にベクトルとしては
\begin{displaymath}
\dot{\mbox{\boldmath$x$}} = \mbox{\boldmath$f$} (\mbox{\boldmath$x$})
\end{displaymath} (5.152)

ここに $ \mbox{\boldmath$x$} = [x,\dot{x} ]^Tまたは\mbox{\boldmath$x$} = [x_1,x_2]^T $で表示する。

通常インパルス、ステップ、ランプ、等加速度などの入力に対する応答を見るの に適用される。

3次元の状態空間による解析も行われるが、非常に複雑となる。高次のシステム は、むしろ適当な省略によって2次系として解析が行われる。

たとえば

\begin{displaymath}
M \frac {\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} = F
\end{displaymath} (5.153)

というようなシステムの場合
\begin{displaymath}
\frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t} \equiv \dot{x}
\end{displaymath} (5.154)

とすると
\begin{displaymath}
\frac {\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2} = \frac{\mathrm{d}\dot...
...\mathrm{d}x} = \dot{x}
\frac{\mathrm{d}\dot{x}} {\mathrm{d}x}
\end{displaymath} (5.155)

となるから、(5.155)式は
\begin{displaymath}
M \dot{x} \frac{\mathrm{d}\dot{x}}{\mathrm{d}x} = F
\end{displaymath} (5.156)

となり
\begin{displaymath}
\frac{1}{2} M \dot{x} ^2 = Fx+C
\end{displaymath} (5.157)

となる。$C$は積分定数であり、初期条件によって決定される。 (5.159)式は$x$$\dot{x}$との関係を示しているから、$x$を横軸、 $\dot{x}$を縦軸にとった位相面に$F=+1$$F=-1$の場合を描くと図 5.29のようになり、これが(5.155)式のシステムの位相面軌 道である。初期条件$C$のとり方によって横軸に平行移動する形となる。
図 5.29:
\includegraphics[scale=0.60]{eps/5-4-1.eps}


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Yasunari SHIDAMA
平成15年7月28日