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非線形制御系

「自動制御系の構成要素が非線形特性を有することによって、その制御方程式が 数学的に定義された非線形微分方程式となるとき、この自動制御系を非線形制御系と いう。」

ある構成要素の入力を$x$、出力を$y$としたとき、その要素の特性が

    $\displaystyle a_0y^{(m)}+a_1y^{(m-1)}+\cdots +a_{m-1}y$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle b_0x^{(l)}+b_1x^{(l-1)}+\cdots +b_{l-1}x$ (5.1)

で表され、係数$a,b$が定数の場合は線形特性である。もし、その特性が
    $\displaystyle a_0(y)y^{(m)}+a_1(y)y^{(m-1)}+\cdots +a_{m-1}(y)y$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle b_0(x)x^{(l)}+b_1(x)x^{(l-1)}+\cdots +b_{l-1}(x)x$ (5.2)

で示すように、係数$a,b$$x,y$の関数になっている場合は非線形となる。

そのほか、他の変数との積、変数のべき乗、三角関数等を含む場合、例えば

\begin{displaymath}
\{ y(t) \} ^n=bx(t)
\end{displaymath} (5.3)


\begin{displaymath}
\frac{\mathrm{d}y(t)}{\mathrm{d}t}+\sin y(t)=bx(t)
\end{displaymath} (5.4)

のようなものも非線形である。

非線形の一種として係数が時間関数となっている場合、例えば

\begin{displaymath}
a_0(t)y^{(m)}+a_1(t)y^{(m-1)}+\cdots +a_{m-1}(t)y=b(t)x
\end{displaymath} (5.5)

のような場合を時変形という。

実際の物理現象や機械の特性には大なり小なり非線形特性を有している。通常は これを近似的に線形と見なして取り扱っているのに過ぎない。しかし非線形特性の 影響が大きい場合には、それを無視することができない。

代表的な非線形特性としては次のようなものがある。

飽和特性(リミッター)

5.1(a)に示すように、例えば増幅器でも入力がある値を越えれば出力は それ以上は増加しない。これを式で表示すると次のようになる。
\begin{displaymath}
F(v) = \left\{ \begin{array}{lcl}
Kv & & \vert v\vert \leq ...
...{\ \mathrm{sign}\ }v & & \vert v\vert > s
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.6)

ただし、 ${\ \mathrm{sign}\ }v$$v>0$の時+1、$v<0$の時−1となることを意味する 記号である。
図 5.1:
\includegraphics[scale=0.60]{eps/5-1-1.eps}

不感帯特性(デッドゾーン)

5.1(b)に示すように、例えばサーボモータのように、入力が小さい ときは静止摩擦のため動き出さず、ある値を越えてから動き出し、出力が発生する 場合がある。これを式で表示すると次のようになる。
\begin{displaymath}
F(v) = \left\{ \begin{array}{lcl}
0 & & \vert v\vert \leq d \\
K(u\mp d) & & \vert v\vert > d
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.7)

ヒステリシス特性(バック・ラッシュ)

5.1(c)のように連結機構に”がた”がある場合、入力の方向が逆に なったとき、一時その位置を保ち、それから逆方向に動き出す。また磁気回路に おいても、磁気力を増大していく時と、減少していくときとで磁束密度は異なる 特性を示す。このような履歴現象を式で表示すると次のようになる。
\begin{displaymath}
F(v) = \left\{ \begin{array}{lcl}
K(v-h) & & vの増大時 \\
K(v+h) & & vの減少時
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.8)

ただし、増大から減少へ、また減少から増大へ移行するときは$v$$2h$変化する間、 $F(v)$はその値を保つ。

オン・オフ特性(リレー)

リレーや、その他接点機構を持つ要素は図5.2に示すようなオン・ オフ特性を持つ。同図(a)は2位置、(b)図は3位置、(c)図はヒステリシス のある2位置、(d)図はヒステリシスのある3位置の特性を示している。

オン・オフ要素は装置が簡便であるという点、また最短時間制御が行える という点など利点もあるので、制御系として積極的に利用することがある。 3位置特性を式で表示すると次のようになる。

\begin{displaymath}
F(v) = \left\{ \begin{array}{lcl}
0 & & \vert v\vert \leq d...
...{\ \mathrm{sign}\ }v & & \vert v\vert > d
\end{array} \right.
\end{displaymath} (5.9)

図 5.2:
\includegraphics[scale=0.60]{eps/5-1-2.eps}


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Yasunari SHIDAMA
平成15年7月28日