: 不変部分空間
: Dsys
: 可観測性
資源の「リサイクル」は今日的課題ですが,この節では,行列の「リサイクル」の話
をします.
これは次節のお話の準備です.
行列 の固有値を求め, の対角化を行いましたが,そのとき用いた
特性方程式
については,他の性質も知られています.
が 次の正方行列なら
は についての最高次が
次の多項式になります.すなわち
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(29) |
例
なら
で
|
(30) |
です.
ここで(29)の の替わりに を使った行列の式も
を充たします.
は要素が全て の行列です. は単位行列です.
これをケイリー・ハミルトンの定理といいます.
実際,(30)のついて の替わりに を使った式を調べると
練習問題8 (30')を確認してください.
以下この定理を証明します.
[ケーリー・ハミルトンの定理の証明]
[準備:余因子行列]
大学の1年次か高校時代,行列の逆行列の話と一緒に,余因子行列を習ったと思います.
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(31) |
について の余因子行列 は
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(32) |
は の第 行と第 列の要素を除いた
行 列の部分行列式
です.
例えば
は の第2行と第1列の要素を除いた 行 列の部分行列
|
(33) |
の行列式 です.
例
なら の余因子行列 は
さて, と の余因子行列 との積には
という関係があります.
は の行列式, は単位行列です.
練習問題9 上の, と の例について確認してください.
[定理の証明]
行列 の余因子行列を とします.
このとき の 行 列の要素は の第 行と第 列の要素を除いた 行 列の部分行列式
ですので についての最高次数 次式です.
これが つ いて成立っていますから, の各次数ごとに整理すると
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(34) |
となります.
[例]
の例では,これの余因子行列 は
で
とおくと
[例終わり]
さて,行列とその余因子列の積=行列式ですから
これに(29)式
(34)式
を代入すると
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(35) |
(35)式の両辺の の次数を比較して,
[証明終わり]
この定理から,
であり,
は
から計算できます.すると,結局,
の 以上のべき乗は,
から計算できることが判ります.
練習問題10
について,証明の議論をやってみてください.
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Yasunari SHIDAMA