10.5 リンカ（linker）

　　2.ldによる実行可能モジュール生成の実際
　asが生成したオブジェクトコード（hello.o）を用いて、ldが実行可能モジュールの生成を行います。実行可能モジュール（objdumpを用いて逆アセンブルしたもの）を以下に示します。
<hello.o>
　　　↓
　[リンク、実行可能コード生成：ld(collect2)]
　　　↓
<hello>（「objdump -d hello」で表示） 

　hello:     file format elf32-i386

　Disassembly of section .init:

　08048230 <_init>:
 　8048230:       55                      push   %ebp
     　         　　  :
   　             　　:
 　804824e:       89 f6                   mov    %esi,%esi
　Disassembly of section .plt:

　08048250 <.plt>:
 　8048250:       ff 35 e4 92 04 08       pushl  0x80492e4
     　           　　:
         　       　　:
 　804827b:       e9 d0 ff ff ff          jmp    8048250 <_init+0x20>
　Disassembly of section .text:

　08048280 <_start>:
 　8048280:       31 ed                   xor    %ebp,%ebp
     　    　　       :
         　    　　   :
 　80482a3:       90                      nop

　080482a4 <main>:
 　80482a4:       55                      push   %ebp
 　80482a5:       89 e5                   mov    %esp,%ebp
 　80482a7:       68 cc 82 04 08          push   $0x80482cc
 　80482ac:       e8 bf ff ff ff          call   8048270 <_init+0x40>
 　80482b1:       c9                      leave
 　80482b2:       c3                      ret
　Disassembly of section .fini:

　080482b4 <_fini>:
 　80482b4:       55                      push   %ebp
     　　　           :
　　　                :
 　80482be:       81 c3 23 10 00 00       add    $0x1023,%ebx
　前述の再配置可能オブジェクトファイルのなかで、push $0x0や<main+0x9>などと相対番地指定されていた箇所が、リンカによってモジュール中でのアロケーションが決定され、それぞれ、push $0x80482cc、<_init+0x40>などと配置が決定されていることがわかります。

　前者のpushすべきメモリ領域は、ターゲット上で実行可能モジュールがロードされた後に領域確保され、絶対位置が決定されて確定します。後者の<_init+0x40>なる場所も、ターゲット上で実行可能モジュールがロードされた時点で、オペレーティングシステムからプログラム（コード）領域から.initの絶対位置が決定されて確定します。