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安定の概念

連続系の場合と同様、離散値系にもリアプノフの安定の概念が適用される。リア プノフの安定判別は線形、非線形の何れにも適用され、解を求めずに安定を判別 するのに有効な方法である。

そこで、一般的に次のような差分方程式で表されるオートノマスな系について考える。

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$x$}(k+1) = \mbox{\boldmath$f$}[\mbox{\boldmath$x$}(k)]
\end{displaymath} (4.121)

このような系において、平衡状態における状態変数を $\mbox{\boldmath$x$}_e$としたとき
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$x$}_e = \mbox{\boldmath$f$}(\mbox{\boldmath$x$}_e)
\end{displaymath} (4.122)

である。この平衡状態の安定性は $\mbox{\boldmath$x$}_e$の近傍における自由系の挙動で定義 される。

安定(Stable)

平衡状態から乱されたとき、再び平衡状態の近傍に戻り、そこに停る場合、すな わち図4.16の実線で示すように「$S_j$の範囲内の $\mbox{\boldmath$x$}(0)$から出 発する総ての $\mbox{\boldmath$x$}(k)$$S_i$の範囲内に停る場合」を安定という。

離散値系であるから、図中の各所の所を移動することを示している。

図 4.16:
\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.60]{eps/4-5-1.eps} \end{center} \end{figure}

漸近安定(Asymptotically stable)

平衡状態からわずか乱されたとき、再び平衡状態に戻る場合、すなわち図 4.16の点線で示すように「$S_j$の範囲内に含まれる$S_0$内のある点 $\mbox{\boldmath$x$}(0)$ から出発する $\mbox{\boldmath$x$}(k)$ $k\rightarrow\infty$で平衡点に到達す る場合」を漸近安定という。ただしこの場合$S_0$内から出発する場合に限られ ているので大局性はない。

大局的漸近安定性(Asymptotically stable in the large)

平衡状態から、いかに大きく乱されても、再び平衡状態に戻る場合、すなわち図 4.16 の破線で示すように「$S_1$という可能なる全範囲の総ての $\mbox{\boldmath$x$}(0)$ から出発する $\mbox{\boldmath$x$}(k)$ $k\rightarrow\infty$で平衡点に到達す る場合」を大局的漸近安定という。



Yasunari SHIDAMA
平成15年6月30日