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終わりに

本研究では,四輪独立駆動型全方向移動ロボットの運動学の導出を行い,そのシミュレーションや走行特性実験を行った.シミュレーションによる運動解析においては,各種の走行モード,全方向モード,スピンモード,カーモードに加えて,回転中心を任意の位置に連続的に変えて移動する旋回モードで,容易に運動を指令できる方式であることが確認できた.これらの走行モードを実験でも行い,シミュレーションとの比較も行った. 走行実験では,DCモータ駆動とステッピングモータ駆動四輪独立駆動型全方向移動装置の試作を行い,各種の走行実験やその比較を行った.特に,全方向移動モードによる走行実験では各種の複雑な走行を行わせることができた.ステッピングモータ駆動による四輪独立駆動型全方向移動装置が,各種の複雑で精度のよい移動が可能で,再現性もよいことを確認することができた.また,この全方向移動ロボットを「書道ロボット」に応用することによって,文字を描画するという複雑な走行を行わせてみた.当初予想した以上の良好な走行性能を示した.駆動モータにステッピングモータを採用したことに加え,懸架装置の付加などで,走行性能は通常の移動装置としての条件を満足できるものとなった.今回開発した全方向移動装置には2相ステッピングモータを使用したが,多相ステッピングモータや各種の同期モータの使用により高トルクで高効率な運転ができる装置の開発が可能である.各種の移動装置に活用できる可能性を充分持っている[22,23].近年の移動ロボットは,据え付け型ロボットから移動型ロボットへと,活躍の場を工場の外に求めている.これら移動型知能ロボットや自律型移動装置が,このステッピングモータ駆動による四輪独立駆動型移動装置を足回りに利用することによって,さらに活動の場を広げるものとして,大いに期待できる. 全方向移動装置の駆動機構を,球形ロボットの駆動機構に応用した装置の試作を行った.従来の球形車輪は駆動機構に2輪車を採用しているため,直角に方向転換する際には一旦内蔵の駆動機構が方向転換する準備動作を必要とした.全方向移動装置を駆動機構に採用した今回の球形ロボットでは,瞬時に直角に方向転換するクランク走行の行えることを確認することができた.駆動機構には姿勢制御や速度制御を行っていないため,走行の挙動は不安定であったものの,ホロノミックな走行が行えることが確認できた.今後は,安定な走行を行わせるための制御や駆動機構の重心を低く押さることや駆動ユニットの改良が必要である. 実用的な応用として,滑らかでしかも精度の良い移動が要求される障害者用の作業用車椅子の操縦装置の開発と全方向移動車椅子の提案を行った.脊髄損傷者の場合,四肢の麻痺はあるものの頚部の機能は残存する.マウス入力に替わる入力装置として,首や肩の機能を利用した装置の開発を行い,描画や操作速度の実験を通して,四肢障害者支援機具の一つとして活用できることを確認した.この装置はあらゆる方向に描画可能でしかも任意の移動速度を指示することができる.これによってこの装置が全方向移動装置の操縦装置に利用可能であることが確認できた.

Shoichiro FUJISAWA