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安定の定義

非線形をも含めた場合、安定性については種々の定義が考えられている。

  1. 安定(stable)[リアプノフの意味での安定]

    図 2.11: リアプノフの意味での安定
    \begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.60]{eps/2-6-1.eps} \end{center} \end{figure}

    ある $s(\delta)$ の中から出発する解軌道が 図2.11 に示すように $t \rightarrow \infty$ となっても、ある状態空間 $s(\varepsilon)$ よりも外に出ないとき安定という。

    すなわち

    \begin{displaymath}
0 \leq \mbox{\boldmath$x$}_0 \leq \delta
\end{displaymath} (2.145)

    の初期条件から出発して全時間範囲に対し
    \begin{displaymath}
0 \leq \mbox{\boldmath$x$}(t) \leq \varepsilon
\end{displaymath} (2.146)

    である。ということで、逆に云えば、ある $\varepsilon$ の範囲を出ないための 初期条件の範囲 $\delta$ が存在すれば安定である。この場合 $\delta$ をどのように 選ぶかは定めてないから局所的であり、大局性はない。
  2. 漸近安定(Asymptotically stable)

    上記の安定性を満足していると同時に、原点 $\mbox{\boldmath$x$}_e$ の十分近くから出発した 軌道が最終時間において $\mbox{\boldmath$x$}_e$ に収束する場合を漸近安定という。

    図 2.12: 漸近安定
    \begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.80]{eps/2-6-2.eps} \end{center} \end{figure}

    すなわち 図2.12 に示すように $t = t_0$ において

    \begin{displaymath}
\Vert \mbox{\boldmath$x$}(0) - \mbox{\boldmath$x$}_e \Vert \leq \delta
\end{displaymath} (2.147)

    より出発し、 $t \geq t_0 + T$ の時間では、
    \begin{displaymath}
\Vert \mbox{\boldmath$x$}(t) - \mbox{\boldmath$x$}_e \Vert \leq \mu
\end{displaymath} (2.148)

    となる場合で、 $\mu$ は正の実数であるので、十分時間が経つと $\mu$ 以上離れて いるものはないことを示している。然し、出発点 $\mbox{\boldmath$x$}_0$ は全域的であるとは 限らないので大局性はない。

    この収束の仕方が $\mbox{\boldmath$x$}_0$ によらず均一に行われるとき均一漸近安定 (equiasymptotically stable)といい、 $t_0$ によらず均一漸近安定のとき 一様漸近安定(uniformly asymptotically stable)という。

  3. 大局的漸近安定(Asymptotically stable in the large)

    上記の意味での安定であり、 $t \rightarrow \infty$ のときすべての軌道が $\mbox{\boldmath$x$}_e$ に収束する場合を大局的漸近安定という。この場合は全状態空間について いうので、 $\mbox{\boldmath$x$}_0$ は必ずしも $\mbox{\boldmath$x$}_e$ の近傍とは限らず大局性がある。

    本章では線形固定系について取り扱うのであるが、その場合はこの安定性の定義が 適用される。



Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日