Next: 一般的な最適制御
Up: 最適制御理論
Previous: 概要
ラグランジュの未定乗数法によると
|
(2.172) |
という拘束条件のもとで、連続関数
を極値にするには
を未定の乗数としたとき、次の補助関数
|
(2.173) |
の、
および に対する
極値を求めればよい。
制御系の場合はシステム方程式
|
(2.174) |
が拘束条件となり、評価関数
|
(2.175) |
を最小とする問題となるから、補助関数は
となり、この
および
に対する極小値を求めれば、
最適制御が得られる。
いま、ある軌道を通ったとき
であり、その近傍を通ったとき
( は微少な定数)
であったとする。そのとき両者の補助関数の差を とすると
|
(2.177) |
になる。上式の被積分関数は Taylor 展開をすると
となる。したがって
|
(2.179) |
になる。補助関数が極値となるための必要条件は
|
(2.180) |
である。これから
|
(2.181) |
という条件が得られる。
この積分の第2項を部分積分すると、
|
(2.182) |
となる。最終状態指定の場合は
であり、初期状態も
ゆえ、上式右辺第一項は0となり、したがって
(2.181)式は
|
(2.183) |
になる。すべての
に対してこの式が成立するためには
|
(2.184) |
が条件となる。これをオイラー(Euler)方程式という。この式に(2.176)式
を適用すると
いま
|
(2.186) |
とする。これをハミルトン関数(またはH関数)という。そのとき
|
(2.187) |
になる。
同様にして、
に対するオイラー方程式は
|
(2.188) |
となり、
となる。
であるので、以上をまとめると
|
(2.191) |
となる。
最適制御を求める手順
(第1段階)
|
(2.192) |
を求める。
(第2段階)
|
(2.193) |
より
を求める。
(第3段階)
最適の 関数
|
(2.194) |
を求める。
(第4段階)
|
(2.195) |
を
の境界条件で 組の方程式を解く。
(第5段階)
上記で求めた結果を
に代入して最適制御を得る。なお最終時刻 が
規定されていないときは
の期間中
となる。
[例1]
図 2.16:
|
図2.16の一次遅れ制御対象に対し、最小の制御力 によって制御量 の
自乗積分値を最小にする最適制御を求める。
評価関数は
|
(2.196) |
システム方程式は
|
(2.197) |
(第1段階)
|
(2.198) |
(第2段階)
|
|
|
(2.199) |
|
|
|
|
(第3段階)
|
(2.200) |
(第4段階)
|
|
|
(2.201) |
|
|
|
(2.202) |
両式より
|
(2.203) |
解は
|
|
|
(2.204) |
|
|
|
(2.205) |
境界条件として、
を代入すると、
|
(2.206) |
ゆえに
|
(2.207) |
(第5段階)
|
(2.208) |
[例2]
前例で
とした場合、(第4段階)で
|
|
|
(2.209) |
|
|
|
(2.210) |
となり
|
|
|
(2.211) |
(第5段階)
|
(2.212) |
この場合は と指定されているので
である。
[例3]
上記の制御対象に対し、最小制御力で制御量の自乗積分偏差も最小、かつ最短時間で
目標に達せしめる最適制御を求める。
評価関数は
|
(2.213) |
システム方程式は
|
(2.214) |
であり、 で
で とする。
(第1段階)
|
(2.215) |
(第2段階)
|
|
|
(2.216) |
|
|
|
(2.217) |
(第3段階)
|
(2.218) |
(第4段階)
|
(2.219) |
解は
で ゆえ
|
(2.223) |
である。また が指定されていないので、
で
である。したがって を に代入すると
したがって
となる。 となるためには でなければならないから、
となる。
(第5段階)
[例4]
図 2.17:
|
図2.17の系において最短時間で目標に達するための最適制御を求める。
システム方程式
|
(2.227) |
評価関数
|
(2.228) |
(第1段階)
|
(2.229) |
(第2段階)
この式の極大を得るには、
このことは、オンオフ制御(バング・バング制御)を意味する。オンとオフの
切換条件は のところとなる。しかし実際にこの方法で
のところを見出すのは容易ではない。この問題は後述するような非線形制御系の
問題として別の方法で容易に得ることができる。
Next: 一般的な最適制御
Up: 最適制御理論
Previous: 概要
Yasunari SHIDAMA
平成15年5月12日